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子供の頃、家のトイレがまだ水洗じゃなかった頃は、トイレに入るのが怖かった。 絶対そこは日常と異次元とをつなぐ結界で、そこには妖怪がいる―と思っていた。
…普段はとにかくおとなしく素直で上品でじっとしているのに、 私がトイレに行くと―いきなり豹変する、銀色のふさふさした毛を持つ生きもの。
どんなに気付かれないようさりげなく、あるいはそっとトイレに入っても、 必ず!どこからかたたたたたた…と走ってきて、トイレのドアの角をガリガリ齧って 「開けろ〜」と脅す…来た!妖怪・便所小僧だっ
仕方なくドアを少し開けてあげると、 あの、いつもおとなしい動物とは思えないハイテンションのノリで、 便座に座っている私の足に前足をかけて 「てへっ!」と目をぎらぎらさせてニヤニヤ。 あげく、便座の周りをぐるぐる走りまわったり、 トイレの中にある本を片っ端から齧りまくる。 何か得体の知れない霊力を得て、呪術的な儀式でもしているかのよう。。。
で、水を流すと、ふっと一瞬に静かになり…とぼとぼ去っていく― これがトイレのたびに出現して繰り返される。
え?ボクちゃまのことでちか?
この便所小僧のおかげで、居間のドアとトイレのドアの角は齧られてボロボロ。。。 夜中であってもこの便所儀式は絶対に欠かせないらしく、 暗い廊下を小躍りしながら私の後をついてくる様子は、何か不自然で不気味だ。 やっぱり、トイレには何か魔力があるらしい…
きゃーっ便所小僧ってサイテー!
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