いらっしゃいませ!(禁/無断転載・複写)

茶々丸との出会い 2
1145659867848716.jpg
よろしゅうに
初日にコレをやったらおもしろかったんだけどねえ。
「可愛いでしょう。とても人なつっこいんですよ〜」
と、得意げに店員が話しかけてくる。
確かに可愛い。まるまるとして、ぬいぐるみみたいだ。
だが、私の本音は、
「どんなに可愛くても、あなた達、店側からすれば、商品価値のないいらない子なんでしょう?」
という言葉がぐるぐる回っていました。
内心、まずいなあと、思いつつ・・・。

私は、どういう訳だか、いらない子という言葉に敏感だった。自分自身、「いらない子」だったからかもしれない。でも、どう思われようとも、ここに生きているのである。生き物の存在価値を無しという考えは、嫌だった。どんな生き物でも、生きたいのである。
・・・・話を茶々丸に戻そう。


「0円だってさ」
「ホーランドか・・・もう、大人だな」
旦那もその値札には気付いていたようだった。だが、家で生き物の世話は、出張しがちで、普段も在宅時間が極端に短い旦那では不可能に近く、必然的に妻の仕事になる。ただでさえ、幼児がおり、うさぎもすでに一匹がおり、魚もいる。
世話が出来ない(責任取れない)人間がとやかく言うべきではないと、黙っていたようだった。(賢明だね)

引き取り手になりやすいと見られたのか、店員がお姉ちゃんに話しかける。
「可愛いでしょう〜だっこも出来るよ。したい?」
「うん!!」
当然、喜ぶ娘。落としたときの危険性を考え、他の客の邪魔にならない隅の狭い床に座らせ、その膝の上に載せてやる。
見知らぬヒトで怯えているのか、ウサギはまるいまま、おとなしく膝の上に載っている。一応扱いを仕込まれているから、嫌がらない程度で、その背中をゆっくりと撫でるお姉ちゃん。
くぅは、気が荒く、ナデナデさえ拒むウサギだから、お姉ちゃんは、大満足だった。

目を離さないまま、私が店員に尋ねる。
「何故、0円なの? 問題って?」
「この子、前歯が不正咬合なんです。定期的に医者に通わなければ、いけないんです」
一応、それなりに本とかを読んでいたから、知識はあった。
「歯だけ?」
「はい。他は問題ありません」
私の知識の中では、医者の定期的な処置が必要ではあったが、あれは、病気とは思えなかった。
つまり、爪切りと同じ感覚だったのだ。
そこへ、店員のひと言。
「ペットの医者通いを嫌がる人は多いですから。お金もかかりますし。治る見込みもない病気ですからね」
これには、かちんと来た。そう言うことを言う人間に対してである。
動物を飼う以上、えさ代、医者代は覚悟すべき必要経費だ。人間だってそうではないか。そんな馬鹿なことを言う人間は、ペットを飼う資格がない。
「ここで、健康でも、病気になる可能性なんて、どの動物でも一緒でしょう? お金だって、最近はペット健康保険だってあるし・・・」
「それは、そうですが。お客様のような人とは限らないんですよ」
まあ、そうだろう。人と違う珍しい物をペットにしたいという理由で、100万以上の魚を買うヒトもいるぐらいだから。
「この値段表示はいつまで?」
「あと、2日です」
そこで、とうとう、私は最後の質問を放った。
「で、引き取り手がいないと、この子はどうなりますか」
「・・・・・・・・・・・・・その・・・」
口ごもる店員に、だめ押しをした。
「いなくなるんですね」
「ええ・・・まあ・・・」
それで、はっきりした。この子は、正月明けになると処分される。保健所が営業開始するまでの命なんだと。
それまで店員の態度を不安げに見ていたお姉ちゃんが、言葉の意味をおぼろげに悟ったようだった。
「いなくなるの?」
「そうだよ」
そう言うことに、私は容赦がない。たとえ5才のお姉ちゃん相手でも、平然と現実を口にする。
雰囲気で察したのだろう。とたんに、しゅんとなった。俯き、目をごしごしとこすっている。・・・・泣いている。
「もう、いいでしょう。そのうさぎさん。ケージに戻してあげて」
いやいやと、首を横に振る。離したら、最後だと思ったのだ。それは、正解である。
寝ていたウサギが、起きあがり、お姉ちゃんお顔を見上げたあと、膝からおりようとする。
「駄目〜!!」
大きな声で叫び、捕まえようとするが、そこをすり抜け、お姉ちゃんの背中に廻る。
ウサギも雰囲気を察したのだろうか。
「とりあえず、中に入れてあげて。そのあとで」
有無も言わさぬ口調に、諦めたのか、渋々動くお姉ちゃん。
店員は、たやすくウサギをケージに戻すと、この家族は無理だと思ったのか仕事に戻っていった。

少し離れたところにいた旦那がそばに来た。娘の様子がおかしいことに気付いたのだ。
「どうした?」
先ほどまでの会話をかいつまんで話し、最後にひと言。
「正月明けに処分だそうだ」
「だろうな」
「どうする?」
「任せる。面倒を見るのはお前だ」
「あれ(娘)の覚悟次第」
可哀想だからと言って、たやすく了解を与えたら、この後、どれだけの動物がウチにやってくる羽目になるか。
ケージにしがみつき、うさぎに話しかけるお姉ちゃんに、旦那は静かに聞いた。
「どうする? うちには、くぅがいる」
「・・・・・・うん」
「母さんがいいと言ったら、父さんはかまわん。だが、もう一匹いるんだぞ」
「・・・・・・」
「病気だと。医者に通わなければイケナイ。それでもいいのか?」
「・・・・・・」
黙って、俯いていたお姉ちゃんが、顔を上げた。顔はもう、涙でぐちゃぐちゃだった。
旦那のズボンに縋り付き、何かを言っている。聞こえないので、旦那が尋ねると、
「もう、しぃちゃんのおやついらない。ジュースもいらない。お年玉で病院連れて行くから。だから、お家に連れて行きたい」
それだけを、鼻水垂らしながら、つっかえつっかえ言う。

こういう事になるのは、解っていたが、まあ、そう言うぐらい覚悟しているのなら、よしとしよう。だったら、ねだるだけ、ねだろう。少なくとも、試供品の餌1パックぐらいは付けてくれるだろう。
「店員さんに、このうさぎさんくださいと、いってきなさい」
私の言葉に、お姉ちゃんの顔が輝く。喜んで走り、大きな声で叫ぶ娘の声を聞きながら、私はぼそっと呟いた。
「ケージ、買わなくては」
それを聞いた旦那のひと言
「こうなるのは解っていた」

結局、交渉の結果、不良品のケージ(すのこがない、金網と底の固定金物が片方ない)を一つもらい、せめてものサービスと、爪切りとグルーミングをして貰ったウサギを引き取り、家に帰ったのだった。

それが、茶々丸との出会いだった。


この記事への返信
茶々丸くん、もうちょっとで危ないトコやったんや。。。。
お姉ちゃんと、パパママさんがエエヒトでよかったな〜!!

うちのおかんも動物飼うときは、命一個預かるんやから、
飼う動物のこと、できるだけ勉強して
その動物ができるだけ幸せに暮らせるようにせなあかん、
っていっつも言うてるねん。
ま、オレが幸せかどうかはナイショやけどな。

茶々丸くんは、ええ家族に恵まれたんやでぇ!!!
Posted by 権造 | 12:36:13, Apr 22, 2006
ありがとうね〜。そう言ってくれて嬉しいよぉ。
きっと、君も幸せだよぉ。
これからもよろしくねえ〜
Posted by 茶々丸 | 12:54:46, Apr 22, 2006
はじめまして。
我が家にもロップがいます。茶々丸くんよろしくね!

おねえちゃんの「おやつもいらない・・・」にもらい泣きしちゃいました。
我が家のぴとくんも売れ残りで値札のない子でした。
鳥かごくらいのケージの中にトイレもなく
ちっこまみれで牧草だけもらってる子だったの。
だから最初は警戒心が強くて凶暴で、かみつきうさぎでした。
今は妹(インコ)たち思いのやさしいおにいちゃんです。
Posted by ようこ | 14:33:31, Apr 22, 2006
はじめまして!
うさべやの世話係こと、夏ともうします。
茶々丸クン、よろしくね!
うちの二代目のくうも、処分間近のところを引き取りました。
やっぱり、生まれてきたこの命。
この場に居合わせたのも何かの縁と思い、
引き取ってきました。
命を育てるということはとても大変だけど、
それに見合うくらいの自分の成長も見られます。
茶々丸クン、良い家族に出会えてよかったね!
これからも元気いっぱい暮らしてね!
そしてこれらのブログの更新も楽しみにしています!
Posted by  | 20:01:30, Apr 22, 2006


◇ 返信フォーム


名前 :   情報を保存する
メール : 
URL : 
題名 : 

内容 : 



June, 2010
-
-
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
-
-
-
PROFILE
茶々丸

2004年7月28日生。ホーランドロップ ♂ 現在1.8キロ。某ペットショップで、0円の値札をぶら下げていた時に、一家と出会う。同居人の趣味であるウサギの服の専従モデル。現在、ぼへら〜教の教祖として、日々布教に励んでいる最弱ウサギ。

くぅ

2002年9月生(推定)ミニウサギ♂ 唯我独尊、我が道を行くタイプ。同居人以外の♀(全ての動物)に優しい。2010年5月31日永眠

烏龍(うーろん)

2006年8月生(推定)ネザーランド ♂ 現在1.05キロ。茶々丸と同じショップ(別支店)で0円の値札をぶら下げていた。めざせ、美脚ウサ?カクカクに勤しむ青少年

くれは

2002年9月15日生 ホーランドロップ ♀ ブリーディング用だったが引退し、それを引き取った。引退前からニックネームを付けていたほどのおねーちゃんのお気に入り。2009年8月14日永眠

CATEGORY
ARCHIVES
RECENT
RECENT COMMENTS
LINK
PR