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この世の名残り 夜も名残り 死ににゆく身をたとふれば あだしが原の道の霜 一足ずつに消えてゆく 夢の夢こそ あはれなれ
あれ 数ふればあかつきの
七つの時が六つなりて
のこる一つが今生の
鐘のひびきの聞きおさめ
寂滅為楽とひびく也
今日(2006/01/29)、12年共に暮らした魚が死んだ。
アジアアロワナとして、観賞用としては最高級魚として、日本に輸入されたのに、次々と飼い主が、この魚を見捨て続けた。
ウチにきたときは、僅か、3年しか生きていなかったのに、すでに所有者の登録数は4人になっていた。
「これから、ずっと先になって、もういいよと、思ったとき、死になさい。貴方の居場所はそれまで、ずっとここなのだから」
最初にウチにきた日の夜。私は水槽の前でそう言った。
魚は、声が聞こえていたのか、じっと動かず、自分を見ていた。
そうして、私は、この魚に「藍(らん)」という名前を贈った。
まだ、自分が旧姓の頃の話だった。
たった一人と一匹の魚。
それだけの生活が始まり、そして、月日は巡り、人間が一人増え、そして、もう一人が増えた。
別の所に水槽が置かれ、小さな魚が泳ぎ回っていた。
その魚たちが消え、そして、新たに入れられる。
藍にとって見慣れぬうさぎという動物が、2匹増えた。
水槽の中から見える風景に、微妙な違いが発生したが、それでも、基本は何も変わらないままに、藍は悠々と広い水槽の中を泳ぎ続けた。
何も変わらないようで、少しづつ変わる日々。
水槽から、藍は何を見つめ続けていたのだろう。
鐘のひびきの聞きおさめ
のこる一つが今生の七つの時が六つなりて
夢の夢こそあはれなれ
一足ずつに消えてゆく
死ににゆく身をたとふれば |
Posted by tyatya | 00:00:00, Apr 23, 2006 | TrackBack:x | Comments:0 |